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519: 名無しさん@おーぷん 2014/11/30(日)18:46:00 ID:Lkq
帰ると嫁が青い顔をして待っていた。
俺はそ知らぬふりをしてテレビを点けた。
暫くすると嫁が俺の前に静かに座り、土下座した。
「浮気してました、すいません」と搾り出す様な小さな声で言った。







肩を小刻みに震わせていたが、それも演技に思えて許す気持ちになれなかった。
双方の気分が高揚している時に短絡的に関係を結んでしまったとう言い訳は、夫人の上場祝賀パーティでの話と合致するが、だからと言って許す理由には全くならない。
嫁は常習ではない事に活路を見出そうと必死だったが、映像で一部始終を目の当たりにした俺には無意味だった。

俺は今更責める気はないけど、せめて親権をくれるぐらいの良心があると信じたいと突き放した。
嫁は離婚だけは許して欲しいと泣きながら嘆願してきた。
そうやってずっと演技し続けるのも疲れただろう?と俺は言った。
嫁はハッと驚いた表情をして俺を見上げた。
この人はどこまで知っているんだろう?という猜疑心に満ちた目だった。
俺は自分のサインを入れた離婚届を彼女の前に差し出し「お互いに楽になろう」という言葉を残して自室に入った。

嫁は最後まで離婚を渋った。
もう一回だけチャンスが欲しいと食い下がった。
中学生になる二人の子供(長女中三)(長男中一)は、母親の不貞を知り、幻滅した様子だった。
特に嫁に懐いていた長女は汚い女だと激しく罵った。
しかし意外な事に子供は再構築を望んでいる風でもあった。
娘に離婚になったら俺についてきてくれるかと聞いたら、あんなでも私にはたった一人の母親だからと言われた。
俺への愛情は偽りであっても、子供に対する愛情は本物だったのかもしれない。
数ヶ月が過ぎたある日、家に帰ると妻のサインが入った離婚届がテーブルに乗っていた。
俺がどうしてもと言うなら仕方ないので離婚しますと彼女は言った。
同席していた二人の子供を見ると気まずそうに下を向いていた。
そういう事か…。
と俺は全てを察しながらあえて「お前たちはどうするんだ?」と言った。
ケジメだと思ったからあえて自分の口からそれを言わせたかったのもある。
「ごめん、私たちお母さんと離れる事ができない」
と娘が言った。

520: 名無しさん@おーぷん 2014/11/30(日)18:46:18 ID:Lkq
俺は無言の息子にも「お前もか」と言った。
息子は小さく頷いた。
そして俺は嫁の顔を見た。
冷徹な嫁の視線がそこにあった。
(ほらね、結局こうなるのよ)と言いたげな勝ち誇った表情に、居た堪れなくなった俺は負け犬の様に離婚届をつかむとそのまま家を出た。
悔しくて情けなくて公園の公衆便所に閉じこもってひたすら泣いた。

翌日、実家に帰り、年老いた父に離婚を告げた。
すっかり涙もろくなった父はそれを聞いて目頭を押さえた。
可愛いがっていた孫にもう会えなくなると思ったのだろうと思うと、少しだけ離婚に踏み切った事を後悔した。
しかし全ては後の祭りだ。
だからといって嫁のところに頭を下げるつもりはさらさらなかった。
妹にも携帯で離婚を告げた。
憔悴しきった自分を見せたくないから携帯で済ませようと思った。
妹に怪しいと思っていたと言われて驚いた。
母の葬儀のときに手伝ってくれていた嫁が手が空いて、妹と一緒に何となく昼のドラマを見ていたそうだ。
それがちょうど社長と社員の不倫の話で、妹が「こんなこと現実じゃ怖くてできっこないよね」と言ったら、嫁の視線がちょっとだけ泳いだそうだ。
社長夫人といい、女の嗅覚は凄いんだと改めて思い知らされた。

521: 名無しさん@おーぷん 2014/11/30(日)18:46:33 ID:Lkq
結局、全てが嫌になった俺は会社を辞めた。
全てリセットしたくて携帯も銀行口座も変えた。
後で妹から嫁が慰謝料を払いたいと言ってきてると連絡が来た。
俺が頑なに離婚を譲らないから子供と組んで賭けに出たのだと言っていたらしい。
妹が兄は行方不明だと告げると、ジサツしてしまったのではないかと心配していたそうだ。
しかし今更そんな事はどうでもよかった。
とにかく俗世と離れたかった俺は当てもなく東北に向かい、最終的にそこに定住した。
月収11万の水道検診の仕事で何とか食いつないだ。
さすがにそれじゃ足りなくて日給10000円で水曜日だけボロアパートの管理人の仕事をすることにした。
老人ばかりのアパートで最初は辟易したが、住人が思いのほか俺を可愛がってくれた。
残ったおかずや使わない贈り物やらを俺にくれて大いに生活に役立った。
妹も気にかけてくれてフリマで見つけた服を俺に送ってくれたりした。
久しぶりに訪れた安穏の日々だった。

しかし残念ながらいいことばかりでもなかった。
父が町会の草刈の途中で倒れ、そのまま逝ってしまった。
多分、俺のことでの心労もあっのだと思う。
一応訃報は妹経由で嫁宅にも知らせたらしいが、嫁はともかく二人の子供も葬儀には顔を出さなかった。
父の葬儀のときに妹から嫁が副社長に就任していることを聞かされた。
社長が罪滅ぼしに昇進させたのかなと俺が言うと、社長側は離婚回避したのだから多分そうだろうと妹が言った、
社長夫婦が再構築したという話は初耳だった。
妹宅に尋ねてきたときに知らされていたらしい。

522: 名無しさん@おーぷん 2014/11/30(日)18:46:53 ID:Lkq
ようやく落ち着きかけていた心が、再び怒りに侵食されていった。
生まれて初めて芽生えた激しい憎悪に夜も眠ることが出来なかった。
いよいよ我慢できなくなった俺は親友にそれを話した。
一連の騒動で俺に同情してくれていた親友は、復讐するなら協力すると言ってくれた。
もともと一人暮らしで物欲のない彼は、金も無利子で貸してくれるという。

俺はAさんに久しぶりに会う事にした。
Aさんは、復讐として某ア*ルト動画投稿サイトにタグを全くつけずに例の映像をアップするんだそうだ。
そして動画のアップ先を会社のメインクライアントのインフォメールに送信すると言う。
リスクは伴うが、訴えられる可能性は低いとアドバイスされた。
訴訟を起こすと知らない人まで話が広まる可能性があるから、大抵の場合は動画削除で話が終わるんだそうだ。
一発目の動画は目線にモザイクを入れて、親しい人以外には本人だと分からない様にする。
しかしその動画はすぐに削除依頼が来るはずなので、二発目の動画に引っかかり易いタグを付けて今度はモザイクなしで大衆の白日の下に晒してみようという事になった。
かなりハイリスクなので最低でも一千万は欲しいといわれた。
法外な額だが親友は金の心配はするなと言ってくれた。
俺は依頼要請し、仕事があるので再び東北へ戻った。

523: 名無しさん@おーぷん 2014/11/30(日)18:47:13 ID:Lkq
数日後、Aさんから動画を打ち合わせ通りアップしたというメールが送られてきた。
正直、人を貶める事に慣れていない俺は激しく動揺した。
せっかく安穏の日々を手に入れた矢先に、あえて再び心がささくれ立つ事をする必要があるのかと自問自答した。
返ってけして消えることのない心の傷を負ってしうような気さえした。

三日後に妹から連絡が入った。
元嫁が血相変えて妹のところに駆け込んできたそうだ。
途方もない損害賠償を課せられることになりそうだから、居所を教えて欲くれないかと、掴みかからんばかりの勢いで言ってきたらしい。
妹は、例え連絡先を知っていたとしても、全てを失った今の兄にそれは何の脅しにもならないだろうと応えたそうだ。
親権まで奪わなければ兄もそこまでしなかったはずだという言葉で、嫁は諦めて帰って行ったらしい。

案の定、一発目の動画はすぐに削除された。
Aさんが直後に二発目の動画を発射しましたとメールを送ってきた。

524: 名無しさん@おーぷん 2014/11/30(日)18:47:29 ID:Lkq
数週間後、Aさんから連絡が来て、社長夫婦が離婚訴訟沙汰になっていると聞かされた。
会社の経営も思わしくないらしい。
Aさんの調査によると、嫁の会社は増益を見込んで銀行から相当な資金を借り入れ、設備投資をしていたそうだ。
例の動画が知れ渡った事が原因なのかは不明だが、かなり契約社員の足切りが行われている様だと教えてくれた。
ほぼ同時期に妹からも嫁の手紙を預かっていると連絡が来た。
動画を目の当たりにして自分がしてきた事の罪深さを痛感しているということ。
自分が報いを受けるのは当然だということ。
しかし子供たちに罪はないということ。
今、学校で動画が明るみに出て、子供たちが学校に行けないでいるということ。
どうかこれ以上、子供たちを苦しませることは止めて欲しいという内容を妹が口頭で読み上げてくれた。
スッキリしたくて行動したはずが、何故か心は晴れなかった。
きっと人を呪わば 穴二つとはこの事を言うのだろう。

Aさんは動画が削除される度にアカウントを変え、執拗にアップロードを繰り返した。
走り出した以上、もう止めたところで仕方がないと思い、Aさんのするに任せた。
数ヵ月後に妹からまた連絡が入った。
いよいよ会社が倒産するらしいとの事。
小額ながら不渡りを出したらしい。
役員に昇格していた嫁も借り入れの保証人になっているらしく、かなり窮地に立たされていた様だ。
子供は嫁の実家に預けたらしいと教えてくれた。

525: 名無しさん@おーぷん 2014/11/30(日)18:47:52 ID:Lkq
暫くして社長夫人が物凄く俺に会いたがっていると妹から連絡が来た。
どういう経路で妹の居場所を突き止めたかは不明だが、突然尋ねて来たらしい。
社長が会社の屋上から飛び降りたそうだ。
しかし妹が言うには夫人は怒ってはおらず、むしろ俺のことを戦友だと思っているとの事だった。
そこまで会いたがっているのならと思い、会ってみることにした。

元夫人は思いのほか元気そうだった。
会うなり彼女は「ザマーミロよね!」と言ってガッツポーズをしながら、実に清々しい笑顔を見せた。
例の映像を見て離婚を決めたらしい。
「本当よくやってくれたわ、有難う!」って言いながら俺の両手を掴んで何度も礼を言われた。
彼女の笑顔を見て少し報われた気がした。
「あの人(社長)は今更人の下に付いて働くなんて、プライドが許さなかったのね」
と彼女はつぶやいた。
そして(死へ)逃げたのよと付け加えた。
その点、元嫁は地方で地味に働いていて偉いと思うと言われ、はじめて元嫁が何処かに働きに出ていることを知った。
地方ショッピングモールの衣料量販店で働いているらしい。
元夫人は悪戯そうな目つきで「行ってみない?」と言った。
「どこに?」と聞くと「決まってるじゃない」と、いかにも楽しそうに笑った。
元夫人は俺の返事を待たずに俺の腕を取ると、そのまま彼女の軽自動車に乗せられた。
元社長夫人とはいえ、慎ましい生活を余儀無くされている状況が車種からも見てとれた。

526: 名無しさん@おーぷん 2014/11/30(日)18:48:13 ID:Lkq
三時間近く車に乗っていたが、終止元夫人は鼻歌交じりの上機嫌だった。
きっとかなり旦那(社長)には苦しまされてきたんだろうという事が窺い知れた。
車を駐車場につけると元夫人はすかさず俺に腕を絡めてきた。
ドキドキしながらそのまま店に入ったが、店員に嫁の姿は見当たらなかった。
「時間が違うのかな?」と俺が言うと、元夫人が奥を見てという風に顎で試着室の方を指した。
視線だけそっちに送ると、嫁と目が合った。
合った途端に嫁が慌ててばつが悪そうに視線を逸らした。
制服がそれなりに似合っていると思った。
元々スタイルはそこそこ良かったから、歳がいっていてもそれほど違和感はなかった。

元夫人はヨレヨレになった俺のジャンパーの袖を摘まみながら、新しいの買った方が良いわねと意味深な目付きで俺を見た。
そして適当な物を見繕い手に取ると、買ってあげるから試着してみなさいよと俺にそれを手渡した。
俺が躊躇していると、ホラと俺の背中を押した。

俺が近づくと元嫁は怯えた表情を見せ、狼狽えた様に後退りした。
その仕草で彼女がどれだけ精神的ダメージを負ったのかよく分かった。
いざ試着してみると一回り小さく、もう1サイズ大きいものを頼もうとしたら、元嫁が既に用意して待っていた。
そういえば、俺の服は彼女が殆ど買っていたのを思い出した。
嫌味の一言でも言ってやろうと思っていたが、彼女と共に過ごした長い年月を思うとその気持ちも萎えた。
レジで会計をを済ませると、元夫人がわざとらしく再び腕を絡めてきた。
そしてそのまま背中に元嫁の視線を感じながら店を出た。
彼女がどういう表情をしているのか気になったが、最後まで振り返る事は出来なかった。
ショッピングモールを出ると元夫人が「あ~スッキリした~!」と言って天を仰いだ。
空は雲一つ無い晴天だったけど、全然心は晴れなくて
「俺はあんまり」という言葉が自然と口から出た。
元夫人に「人がいいのねぇ」と呆れられた。

527: ◆Y9U3ssULxo 2014/11/30(日)18:48:43 ID:Lkq
彼女と別れてから帰りの新幹線の中でよく考えてみた。
冷静に考えてみれは、別に元嫁や子供をあそこまで地獄に落とさなくても、俺は俺で会社なんか辞めずに慰謝料貰って、そこからもう一度再出発してれば良かったんじゃないかって。
相手を貶めても得られるスッキリ感はほんの一瞬、別に自分が浮かばれる訳じゃない。
まぁ、これからは親友に借りた金を少しづつ返済しながら生きていくつもりだ。

528: 名無しさん@おーぷん 2014/11/30(日)18:55:46 ID:Rkc
お疲れ様
としか言い様がないな

529: 名無しさん@おーぷん 2014/11/30(日)19:16:23 ID:nYU
なんかSSっぽいけど
子供って母親の父親disりを本気にして母さん可哀想ってなっちゃうんだよなー
子供達はなんて言い包められたんだろ

530: 名無しさん@おーぷん 2014/11/30(日)19:42:15 ID:jdj
とりあえず言えることは、親友は大切にしておけ そんな良い奴は普通の人生で出会わん

531: 名無しさん@おーぷん 2014/11/30(日)19:45:22 ID:4QQ
> 自分が耕した畑に自分の種を蒔いて何が悪いとも社長は言ったが、俺はその言葉の本当の意味を理解出来ていなかった。


この部分の回収がまだなされていません

537: 名無しさん@おーぷん 2014/11/30(日)21:04:27 ID:3Dr
>>527
乙でした

自分も
> 自分が耕した畑に自分の種を蒔いて何が悪いとも社長は言ったが、俺はその言葉の本当の意味を理解出来ていなかった。
の部分が引っかかった

お子さんたちのDNA鑑定はしなかったのですか?
お子さんたちは有責のお母さんを選んだ
その時点でDNA鑑定して万一実子でなければ籍から抜けば良かったのに

嫁に慰謝料を請求した風でもなく、財産分与すらせず嫁子供に全部あげた印象なんだが
人が良すぎる
離婚した嫁に唆された子供が今後養育費を請求したり、
将来◆Y9U3ssULxoさんが亡くなった時に遺産要求されそうだ
その将来に◆Y9U3ssULxoが新しい家庭を持っていて、本当に血の繋がった子供が
託卵の果てに父親を捨てた不義の子供たちにむしられるようなことになったら目も当てられないよ

538: 名無しさん@おーぷん 2014/11/30(日)22:17:46 ID:3Dr
読めば読むほど、酷い体験だったね>◆Y9U3ssULxo

子供たちにとって祖父に当たる◆Y9U3ssULxoの父親が亡くなった時に
孫が葬式にも来ないなんて信じられない
だけど元嫁はやって来て、副社長になったと自慢したとは
普通逆だし、社長の愛人やっていて離婚したから副社長に昇格なんて元嫁の口から語れないよ、まともなら

しかも
>途方もない損害賠償を課せられることになりそうだから、居所を教えて欲くれないかと、掴みかからんばかりの勢いで言ってきたらしい。

まだ◆Y9U3ssULxoから毟ろうとするのか
慰謝料払う立場の癖に

正直、自分たちは再構築したからと元嫁の副社長昇格を黙認していた社長夫人にもモヤるが
(その時点で再構築はなくなるよ、まともな神経の持ち主ならね)
元嫁が酷すぎて霞んでしまった

707: 名無しさん@おーぷん 2014/12/11(木)08:01:41 ID:icd
>>527
ビデオは相当辛かったと思うけど、「娘が出ていっても私が居るじゃない」と言ってたり
関係解消しようとしたあたり、演技は浮気をしたり嘘付いたりを黙っているのが汚嫁も
旦那や家族に対して辛かったんだと思うから、慰謝料出すって言われた時にもらっとけば
良かったのにとは思うなあ。
まぁ賭けに子供使ったのは悪すぎるし、社長はザマァだけどwww


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