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151: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)12:23:21 ID:jCMhcynqF
12月27日(159日目)

俺は短期のバイトで工場の中でおせちなどのお正月商品を箱に詰めていた。

短期だから30日までのたった4日間の仕事だ。
俺はこうやって長い連休は短期バイトをしてお金を稼いでいた。







長期のバイトは面倒くさくてなかなか踏み出せなかった。
でももし長井に紹介されたバイト先が家から近かったら絶対始めていたと思う。

このバイトで、俺はなおちゃんという一つ年下の女の子と仲良くなった。
周りがおじさんやおばさんしかいなかったから、若い者同士自然にくっついた。

152: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)12:26:22 ID:jCMhcynqF
なおちゃんは長井と真逆のような人間で、明るくてスポーティーな感じの子だった。

俺たちは初めて会ったとは思えないくらいすぐに打ち解け、休憩中なんかもずっとしゃべっていた。

いろいろな短期バイトをしたが、こうして誰かと仲良くなるのは初めてだった。
これも長井のおかげだろう。

彼女がいる時の方がいない時よりもモテるみたいな感じ。
この時の俺は尋常じゃないほどのコミュ力だった。

長井は彼女じゃないけど。

153: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)12:28:37 ID:jCMhcynqF
なおちゃん「安藤さんも自転車通勤だったよね」

仕事が終わり作業服を脱いでいる時だった。

俺「うん」

なおちゃん「じゃあこのあと一緒にご飯食べに行こ」

俺「えっと、ちょっと待って」

長井のことが頭に浮かんだ。
そういえば長井とどこかに遊びに行ったことがない。常にどちらかの家だ。
ここで行くと長井に対する裏切りのような感じがする。

しかしすぐに冷静になった。
馬が合う友達とご飯を食べに行く。その友達がたまたま女の子ってだけじゃないか?
実際俺はなおちゃんに対して恋愛感情を持っていないし、今日会ったばかりだから向こうもそうだろうと。

俺「よし、行くか」

俺たちは近所のファミレスに行った。

154: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)12:29:50 ID:jCMhcynqF
12月28日(160日目)

この日もなおちゃんとバイト終わりにご飯を食べに行った。

たしかどっかのハンバーガー店。
モスだったかな。

俺たちはさらに仲良くなった。

155: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)12:35:56 ID:jCMhcynqF
12月29日(161日目)

なおちゃんとカラオケに行った。


みんなが言うには俺は音痴らしいんだ。

自分の中ではプロみたいに歌えてるんだけど相当外してるらしい。

だからなおちゃんにも笑われた。

そういうなおちゃんもすっげえ音痴で、笑ってやったら叩かれた。

157: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)12:37:39 ID:jCMhcynqF
12月30日(162日目)

バイト最終日

「今日はどこに行く?」となおちゃんに訊くと、「ラーメン食べに行きたい」と言われた。

そこで俺が一番好きなラーメン屋へ連れて行った。

長井にもこうして自分のおすすめの店に連れていきたいな
なんて考えながら。

158: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)12:39:56 ID:jCMhcynqF
ラーメンは相変わらずおいしかった。

店を出るとあたりは真っ暗。
なおちゃんとご飯を食べた後はいつもこんな感じだ。

自転車に乗り発進しようとしたところでなおちゃんが言った。

なおちゃん「安藤さん、私と付き合って」

俺「・・・マジ?」

なおちゃん「うん」


不意打ちだった。

160: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)12:42:06 ID:jCMhcynqF
なおちゃんが言うには、俺を初めて見た時から気になっていたらしい。
そこで話してみて気が合ったからそこで好きになったんだと。

誰からでも告白されるとやっぱり嬉しいものだ。
俺はテンションが上がった。

でも答えは決まっている。

俺「ごめん」

なおちゃん「・・・だよね・・・たった四日間遊んだだけだし・・・」

俺「また遊ぼうよ。俺なおちゃんと遊ぶの好きだから」

なおちゃん「・・・うん!」

その後なおちゃんとメアドを交換して別れた。

161: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)12:43:23 ID:jCMhcynqF
一人で帰路に着いている中、俺はずっと考えていた。

長井と付き合えば、もっと近くで支えてあげられるんじゃないかと。

そして家に着くなりさっそく長井に電話した。



なおちゃんの告白に感化されちゃったんだよな。

昔の俺はアホみたいに単純で恥ずかしくなる。

162: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)12:46:06 ID:jCMhcynqF
長井「・・・ごめん。付き合えない」

だよね。

告白した直後に思い出した。
長井は誰とも付き合いたくはなかったんだ。

だから全然悲しくなかった。

長井「安藤君のことは嫌いじゃないよ」

俺「いやいいって、俺の方こそ急にごめん。なんか焦ってたww」

すっげえ勇気出したからむしろスッキリした。

163: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)12:48:24 ID:jCMhcynqF
12月31日(163日目)

午後8時ごろ、一緒に近所の神社に初詣へ行くためにハマーがうちに来た。

俺「お前、早すぎるだろ。約束の時間は11時だぞ」

ハマー「家にいても暇なんだよ」

俺「まあいいや。ゲームでもして時間つぶそうぜ」

ハマー「スマブラスマブラ」

俺「よし」

今思えばこのころの俺たちはスマブラにハマりすぎてた。


164: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)12:50:08 ID:jCMhcynqF
ハマー「お前スマブラ弱すぎ」

俺「マルスばっか使うな」

ハマー「それはそうと、長井とは進んだか?」

俺「えっ!?・・・いや特には・・・」

長井に告白をしたことも、なおちゃんの存在も黙っておいた。

ハマー「リアルラブも雑魚だな」

俺「意味わかんねえよww」

たぶんハマーは現実の恋愛って言いたかったのだと思う。


165: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)12:53:09 ID:jCMhcynqF
ハマー「おっと忘れてた!クラトゥのCD貸してくれ」

俺「ああ、そうだった」

クラトゥというのは俺が長井と出会ったころくらいから聴きはじめて大好きになったカナダのバンドだ。もう解散してるけど。

俺はずっとハマーにクラトゥを薦めてて、この日CDをとりあえず一枚貸すことになっていた。

俺「俺たちは音楽の趣味が合うからな。聴いたら絶対好きになるぜ」

俺は机の上のCD置き場でクラトゥのCDを探した。

俺「あれっ、ない」

ハマー「机の中だろ。お前何でもこの中に入れる癖あるし」

そう言ってハマーは立ち上がり、机の引き出しを開けた。

俺「そこはダメ!」

ハマー「ほらあった。ん?なんだこれ・・・」

ハマーは血が入ったビンを取り出した。

166: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)12:54:54 ID:jCMhcynqF
ハマー「お前これ・・・血じゃねえか」

俺「・・・」

俺はハマーと目が合わせられなかった。

ハマー「説明してくれ」

俺「・・・ああ」



167: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)12:57:25 ID:jCMhcynqF
俺「これは長井の血だ」

ハマー「それはだいたい分かる。分かんないのはなんでそんなものがここにあるのかってこと」

俺「・・・あいつ本人から貰った」

ハマー「じゃあ、長井はリスカしてんのか?」

頭がキレるやつだ。

俺「手首だけじゃなく首もね。これはその首の血」

ハマー「・・・」

あきらかにハマーの顔は引きつっていた。


169: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)13:02:06 ID:jCMhcynqF
ハマー「お前もう・・・長井とは関わらない方がいいぞ」

ハマーが唐突に言った。

俺「おっ?僕にやきもちを焼いているのかな?お前やっぱ男が好きだったのかww」

ハマー「おい安藤、今はおふざけなしだ」

俺「・・・わかってるよ」

ハマー「もう一度言うぞ。もう長井と関わらない方がいい」

俺「・・・できるわけねえだろそんなこと」

ハマー「お前が長井のことを好きなことはわかる。でもな、これから受験などがある大事な時期なんだぞ。
長井のせいで精神がぶっ壊されたらどうすんだよ!」

俺「それでも、俺は長井と約束したんだよ。あいつのそばにずっといるって」

ハマー「あーあ、約束しちゃったか・・・」

俺「ああ」

その瞬間ハマーが顔をぐいっと近づけてきた。

ハマー「お前も本当は思ってるんじゃないのか?これは普通じゃないって」

俺「・・・」

ハマー「やっぱりな」

俺「なんで確信するんだよ!」

ハマー「お前は嘘つけないからな。本当のこと言われると黙るんだ」

俺「・・・」

ハマー「ほらそれだ」

俺「あっ」

ハマー「ちょっとトイレ」

ハマーは部屋から出て行った。

170: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)13:04:11 ID:jCMhcynqF
ハマーはトイレから戻ってくるなり言った。

ハマー「このままいけばお前はどんどん泥沼にはまっていく。だけど関わらないなんてことできないだろ?」

俺「うん」

ハマー「じゃあ少し距離を置いてみたらどうだ?」

俺「・・・考えとく」

そんなことしたくなかったけどな。
ハマーが言っていることも一理ある。

ハマー「11時になったぞ。そろそろ行くか」

俺「・・・うん」

長井のことでさらに頭がいっぱいになって
もう初詣なんてどうでもよかった。

171: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)13:06:40 ID:jCMhcynqF
1月1日(164日目)

年が明ける瞬間はお参りの列に並んでいる時だった。

電波の頃合いを見計らって、俺は0時15分くらいに長井に電話を掛けた。


俺「明けましておめでとう」

長井「おめでとう」

俺「えっと、長井・・・」

長井「何?」

俺「俺、もう長井にモーニングコールするのやめるよ」

長井「・・・そう」

俺「・・・じゃあ、電話切る」

長井「・・・うん」


距離を置かなきゃ俺はダメになる。
そう自分に言い聞かせた。

172: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)13:08:05 ID:jCMhcynqF
1月2日(165日目)

長井からメールが来た。

長井『ゼルダいつ返せばいい?』

俺『いつでもいい』

そっけなく返事をした。

長井『わかった』


俺はそれ以上メールを続けなかった。

173: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)13:10:46 ID:jCMhcynqF
1月3日(166日目)

ここ2ヵ月、毎日長井からメールなり電話なり来ていたが、この日は何もなかった。

だから俺も何もしなかった。


ただ、これが辛かった。

たとえ死にたいなんて言われようと、俺は長井と話すのが好きだったし、
それが毎日の楽しみになっていたから。

174: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)13:11:22 ID:jCMhcynqF
1月4日(167日目)

この日も長井とは何もなかった。


電話をして話したかったが我慢した。


175: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)13:14:28 ID:jCMhcynqF
1月5日(168日目)

変に距離を置くほど、俺の長井に対する気持ちはどんどん大きくなっていった。

悩んで悩んで悩みつくして、俺は決めた。

長井とは今後一切関わらないことを。


そして夕方ごろ、長井に最後の電話を掛けた。

177: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)13:15:17 ID:jCMhcynqF
俺「もしもし」

長井「うん」

俺「あのさ、俺・・・もう、長井とは関わらない」

長井「あっそ、じゃあね」


一瞬だった。

電話が切れたあと、俺は風呂に入った。


これでいいんだ。
これで俺は、長井のことなんて考えないで楽に暮らせる。

なんて風呂につかりながら考えたんですけどね。体は正直なんですよ。
また自然に涙が出てきたの。長井との楽しい思い出とともに。


176: 波平 2014/11/20(木)13:15:17 ID:JPPAi5q7v
これってどれくらい前?

178: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)13:17:31 ID:jCMhcynqF
>>176

俺が今20代前半だから7,8年前かな

181: 波平 2014/11/20(木)13:21:04 ID:JPPAi5q7v
>>178
ありがとう教えてくれて
ちょうど7 8年前の年頃なので…つい聞いてしまいました

182: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)13:22:48 ID:jCMhcynqF
>>181

きみもいろいろあったんだな

179: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)13:19:06 ID:jCMhcynqF
一緒にゲームをしたり、ご飯を食べたり、神社で話したり、
そういう当たり前のことさえも楽しい思い出として頭の中に湧き上がってくる。

なんでこんな時に限って・・・。


そして涙を流しながら俺の考えは変わった。

「たとえ将来どうなろうと、長井のそばにいたい!それが俺の望むことだ!」と。

180: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)13:20:47 ID:jCMhcynqF
風呂から上がり、長井に電話した。
出ないかと思ったが長井は出てくれた。

長井「何?」

俺「長井、ごめん。俺やっぱり無理だ。お前と関わらないなんて」

長井ならきっと許してくれるだろうと信じていた。

183: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)13:24:08 ID:jCMhcynqF
長井「もういいよ、今さら」

俺「えっ?」

予想外の答えだった。

長井「安藤君私と約束したよね?ずっとそばにいるって」

今まで聞いたことのない冷たくて早い口調だった。

俺「だから、こうやって戻ってきたんだよ。長井のことが好きだから」

長井「好きならなんであんなこと言ったの?」

俺「・・・」

言えるわけがない。
「これから先もずっと大切な人が自分自身を傷つけるところを見るのに耐えられそうになかったから」
なんて長ったらしい自分勝手な理由が。



185: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)13:28:05 ID:jCMhcynqF
長井「はあ、もう安藤君のことが信じられない。これから学校では行事で話さなきゃいけない時だけが話そうね」

俺「なんだよそれ・・・」

長井「いやなの?私はこういうのに慣れてるから何とも思わないよ。
それに今回は付き合うことを提案された時点で少々気持ちが沈んでいたから過去のような気持ちにならないで済んだんだけどね。ありがとう」

長井が俺のことをどう見てたか少しわかった気がした。

俺「・・・じゃあ俺は今まで通り長井に都合よく使われればよかったのか?」

長井「ねえ、その都合よくって何?」

俺「長井が言ってほしいことを言って、してほしいことをするってこと」

長井「それに応えるのは私が決めることじゃないよね。
だいたい都合よく相手するのが嫌で後からこんな風に言うなら最初から相手しなければよかったのでは?」

確かにそうだ。
ただ断ればいいのに、俺は長井を喜ばせたり安心させたりしたくて、自分を殺していた。

187: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)13:32:40 ID:jCMhcynqF
長井「つまり安藤君は見返りがほしかったんだよね」

リスカにしてもその通りだ。
長井が自傷行為をやめるという見返りがほしいだけで、俺は散々説得してきた。
まあ長井はリスカをやめたいとは思ってなかったから、これは俺の勘違いだけど。

俺「そうだよ。俺は・・・」

と言ったところで思いとどまった。「長井のため」なんて言っても信じないだろう。

俺が黙っていると長井が言った。

長井「結局あなたも今までの中の一人になるだけ」

俺「・・・!!」

ショックだった。
この言葉が一番傷ついた。

俺は長井にとってなんでもなかったんだ。


すると目に涙がにじんだ。

やはり俺の涙腺はゆるい。

このままじゃ涙声になって泣いているのがばれてしまう。

焦りや悲しみやらで頭がごちゃごちゃになり、つい言ってしまった。

俺「自分を客観的に見ろよ!!!」

長井にこんなに大きな声を出したのは初めて会ったとき以来だった。

長井「・・・お前にそんなこと言われたくない!!!」

長井が言い終わると同時に電話が切れた。


俺は机の中にしまっていたクリスマスプレゼントをゴミ箱の中へ思い切り投げ込んだ。

186: 波平 2014/11/20(木)13:32:05 ID:JPPAi5q7v
長井も人の温かさを知らないのかな?
いや知らないからこんなこと言えたんだろうね…
長井…か

188: 波平 2014/11/20(木)13:34:23 ID:JPPAi5q7v
なんか…修羅場だな…
そういう風になるのが怖い

189: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)13:34:25 ID:jCMhcynqF
やばいww
思い出してちょっと辛くなってきたwww

192: 波平 2014/11/20(木)13:38:44 ID:JPPAi5q7v
うんうん…
こっちまで辛くなってきたwww

190: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)13:35:07 ID:jCMhcynqF
1月6日(169日目)

1日中ベッドから出られなかった。

夜、長井に電話を掛けたが着信拒否にされていた。
メールも同じだった。

191: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)13:38:24 ID:jCMhcynqF
1月7日(170日目)

今日から学校が始まる。
休もうとベッドにこもったのに母に叩き起こされた。

学校に行くと、長井がすでに来ていた。

朝のホームルームが始まる前、長井が俺の机の上に小さな袋を置いた。
中を見るとゼルダのソフトが入っていた。
俺が確認すると長井は何も言わず自分の机に戻っていった。

俺は謝ろうと立ち上がり、長井の背に向けて声を出そうとした。

でも、出なかった。



まさにこの時の
俺の心の弱さを象徴する出来事だな。

193: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)13:41:38 ID:jCMhcynqF
1月13日(176日目)

約束していた野郎共でまた街に集まってカラオケに行った。
楽しい雰囲気を壊さないために常に明るくふるまった。

今だけでも長井のことを忘れようと夢中になって歌った。

しかし無理だった。
辛くてまともに歌えない。
音痴の俺がさらに音痴になる。

唯一70点を超えるくるりの『ばらの花』でさえ60点そこらだった。

194: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)13:43:55 ID:jCMhcynqF
カラオケが終わって、夜も遅かったからそのまま解散した。

今日は本屋へ行く必要はない。
俺は真っ直ぐにバス停へ向かった。

途中雪が降ってきた。
まさにあの日みたいだったけど、あの時とは気持ちが真逆だ。

あんなにきれいに見えた雪が今はうっとおしく思える。
まわりではたくさんのカップルが空を見上げていた。

普通にカップル以外の人もいるはずなのに、
なぜか俺の目にはカップルしか入らなかった。

それらを見ないために下を向いてバス停まで急ぐ。
気持ちを切り替えようと耳にイヤホンを差し、適当にiPodで音楽を再生した。


しかしiPodまで俺を追い込みたいのか、
流れてきたのはクラトゥの『December Dream』という今の俺にピッタリの悲しい曲だった。

このムネの苦しさは一生続くのか?
それならいっそ死んだ方がましだ・・・。

生まれて初めて死にたいと思った。

195: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)13:47:24 ID:jCMhcynqF
1月21日(184日目)

学校でも極力明るくふるまった。
みんなに変な心配させたくなかったし、何より長井に俺の弱いところを見せたくなかった。
プライドってやつだと思う。


放課後、ハマーにラーメン屋へ行こうと誘われた。
あまりにもしつこく誘うのでしぶしぶついていった。

なおちゃんとも行ったラーメン屋。
俺たちの行きつけだ。

昼時だけどこの日は珍しく空いていた。
そこで俺たちはいつものカウンター席ではなくテーブル席に座った。

197: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)13:49:48 ID:jCMhcynqF
あんなにおいしかったはずのラーメンなのに味が全くしなかった。
それでも一杯目をなんとか食べきった。

ハマー「すいません、替え玉ふたつ」

店員「はい!」

俺「ちょっと待って!俺のはいいです。こいつのだけお願いします」

店員「はい!替え玉いっちょう!」

ハマー「いいのか?お前いつも替え玉してんじゃん」

俺「腹いっぱい」

長井とけんかしてからずっと食欲がない。
というよりすべての欲が失われた感じだった。

ハマー「ならいいや。で、お前長井とは距離を置けたのか?」

分かっていた。ハマーが俺をラーメン屋へ誘った理由。
これが訊きたかっただけだろう。

200: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)13:52:55 ID:jCMhcynqF
俺は年が明けてから長井と何があったのか、すべてハマーに話した。

ハマー「マジか・・・。その、ごめん安藤」

俺「え?」

ハマー「俺が関わらない方がいいって言ったから・・・。まさかお前がここまで長井のことを思っているなんて・・・」

ハマーはすごく申し訳なさそうにしていた。

俺「何言ってんだよwwハマーはまったく悪くないよww全部俺がしたことなんだから・・・」

ハマー「そうは言ってもな・・・。とりあえず今日のラーメン代はおごる」

俺「さんきゅ」


私はいい仲間を持った

202: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)13:56:03 ID:jCMhcynqF
ハマー「で、長井ともめた後、ちゃんと謝ったのか?」

俺「いや、謝れなかった。最初チャンスがあったんだけどな、それを逃してからさらに声をかけづらくなって・・・もう無理だなww」

ハマー「無理じゃないぞ。一つだけ方法がある」

俺「なんだよ」

ハマー「手紙だ」

俺は長井から手紙をもらった時のことを思い出した。
すべてはそこから始まったんだ。

ハマー「それしかないんじゃないか?お前にできることは」

俺「・・・そうだな」

俺は手紙を書くことにした。

203: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)13:59:13 ID:jCMhcynqF
家に帰るとすぐに長井への手紙を書いた。


『俺に勇気がなかったから手紙にした。
文章がおかしいかもしれないけど読んでくれたらうれしい。
長井は自傷行為とかをすることを自分の欠点だと思ってなかったんだよね。
それなのに俺は自分の価値観を押し付けて、ましてやそれを悪いことって決めつけて止めようとしてた。
すごく迷惑だったと思う。ほんとうにごめんなさい。
もうその時の感情だけで何かをしようとしない。
だからもう一度俺と友達になってくれ。
電話待ってる。      安藤』


ほんとはもっと長いけど、だいたいこんな感じのことを書いた覚えがある。

204: 波平 2014/11/20(木)14:01:02 ID:JPPAi5q7v
うんうん…
聞いているぞ

205: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)14:02:03 ID:jCMhcynqF
1月22日(185日目)

学校の休み時間、俺は長井のもとへ手紙を渡しに行った。
読んでくれるだろうか。そもそも受け取ってくれるだろうか。
たぶんこの時が長井と出会って最も緊張した場面だと思う。

俺「長井、これ」

四つ折りにされた手紙を差し出すと、長井は無言で受け取った。

俺「・・・じゃ」

そのまま教室にいるのは嫌だったからトイレへ行った。


206: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)14:04:37 ID:jCMhcynqF
用を足すわけでもなくただ洗面所でぼーっとしているとハマーが入ってきた。

ハマー「よう、渡せたな」

ハマーは嬉しそうだった。

俺「見てたのかよ」

ハマー「もちろん。ってなんだよ安藤。もっと喜べよー。これで長井と仲直りできるかもしれないんだぜー」

無駄だ。
実はハマーから手紙を書くことを提案された時から思っていた。
いや、もっと前から。最後に長井に電話を切られた時から思っていた。

もう長井とは仲良くなれない。

長井が出会ったころ言っていた男友達がいい例だ。

俺「・・・かもね」

俺は教室へ戻った。

207: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)14:08:11 ID:jCMhcynqF
2月2日(196日目)

長井に手紙を渡してもうすぐ2週間がたつ。
予想通り、長井から電話はかかってこない。

俺は何を迷ったか、少しでも今の環境や自分から抜け出したくて、
17年間連れ添った黒髪を茶色に染めた。

結局、何も変わらなかった。

208: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)14:10:44 ID:jCMhcynqF
2月5日~2月7日(199日目~201日目)

高2と言えば、そう、修学旅行だ。

お決まりのコースをクラスや男グループでまわった。

某テーマパークにも行き、友達もみんな楽しそうにしていた。

俺も「最高!」なんて言って無理やりにでも楽しもうとした。


しかし心の中ではそんなこと思ってないからちっとも楽しくなかった。
常に頭の中は長井のことでいっぱいで、無意識に長井を探してしまう。

ただただ疲れた3日間だった。

221: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)23:05:10 ID:jCMhcynqF
3月9日(231日目)

なおちゃんとカラオケに行った。

なおちゃんと遊ぶ時は基本カラオケかなおちゃんの家だった。
もう俺の部屋は汚くなっていたからな。


何曲か歌った後なおちゃんに言われた。

なおちゃん「ねえ安藤さん、楽しくないの?」

俺「えっ!?いや、楽しいよ」

なおちゃん「安藤さんたまにすごく悲しい顔してるよ」

俺「マジで?・・・ごめん」

長井のことを考えている時だろう。

222: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)23:08:48 ID:jCMhcynqF
なおちゃん「ほんとは楽しくないんでしょ?私と居るのが嫌なんでしょ?」

俺「はあ?なんでそうなるんだよ」

なおちゃん「私ずっと思ってたんだよ!私がいくら楽しそうに話していても安藤さんまったく楽しそうじゃないもん!」

俺「そんなことないって」

なおちゃん「私のこと好きじゃないの!?」

その言葉に俺は異常に反応してしまった。

俺「好き?俺が一度でもなおちゃんに好きって言ったことあるか?」

なおちゃん「ないよ!でもわかるの!」

俺「意味わかんねえ、さっきと言ってることが逆じゃねえか!だいたい俺はなおちゃんのこと好きじゃねえよ!」

なおちゃん「・・・ひどい!なに!?私今まで安藤さんにいろいろやってあげたじゃん!」

俺「やってあげたってなんだよ!誘ってきたのは全部なおちゃんの方からだろ!!
だいたい俺は一回もなおちゃんを恋人だなんて思ったことねえよ!!」

なおちゃん「・・・最低。帰る」

そう言うとなおちゃんは荷物を持って部屋を出て行った。


思ってもないことを言いすぎてしまった。
だけど俺にはもう反省する気力もなかった。

223: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)23:11:45 ID:jCMhcynqF
3月14日(236日目)

終業式

高2最後の日。
終業式が終わった後、教室でクラス最後のホームルームがあった。

担任「今日は最後だからな、一人ずつみんなに一言だけ言っていこうか」

来ると思った。
みんなは慌てて何を言うか考えていた。

担任「じゃあ、まず安藤から」

一番前の端っこの席だから俺からなのは当然だろう。

俺「えーと・・・」

担任「立って言おうか」

俺「はい」

俺はだるそうに立ち上がった。

俺「えーと、この一年間、楽しかったこともあれば楽しくなかったこともありました。結果的に見れば楽しかったです。ありがとうございました」

適当に流した。


224: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)23:13:32 ID:jCMhcynqF
みんなへの一言は次々とまわっていって、とうとう長井の番が来た。

俺は長井の方を一切見ずに、聞き耳を立てた。

長井「私は3年生になったら週1のクラスに変わるので、バイトを頑張りたいと思います。今までありがとうございました」

え!?
今なんて言った?クラスが変わる!?
じゃあ俺が長井に会うのは今日が最後かもしれないのか!?

俺が長井を見ると、一瞬だけ目が合った。
だけどすぐに長井は視線を外した。

225: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)23:14:30 ID:jCMhcynqF
放課後、急いで帰る支度をして教室を見回すと、もう長井はいなかった。

まあ、いても俺は声をかけられなかっただろうけど。

226: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)23:19:25 ID:jCMhcynqF
3月15日~4月10日(237日目~263日目)

春休みの間、俺はバイトもせずにほとんど家の中(ベッドの中)にいた。

何もしたくない。
でも何かしていないと長井のことを考えてしまう。
だけどやっぱり何もしたくない。
という悪循環に陥っていた。

227: 名無しさん@おーぷん 2014/11/20(木)23:21:53 ID:jCMhcynqF
4月11日(264日目)

始業式

学校へ行くと、長井はいなかった。

唯一長井と会えたこの場所でももう会えない。
分かっていたのに辛かった。


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